Use experience of rapid prototyping using salt for fixture placement simulation
○ 今村栄作,重原聡,石田璃久磨,的場祐子,赤池翼,浦口秀剛,小島章広,別部絵利子
Ⅰ目的:医用分野における光造形モデル(Rapid Prototyping)は,診断や手術シミュレーションにおいて非常に有用な方法である.しかし制作コストが高く,またエポキシ樹脂などについては人体への有害性や使用後の環境問題などにおいても問題点があった.しかしソニー株式会社と富田製薬株式会社で共同開発している食塩を材料とした造形モデルについては,制作コストや地球環境への安全性を考慮しており,今後非常に期待される材料である.今回我々は口腔インプラント手術における術前シミュレーションにおいて食塩造形モデルを使用経験したので報告する.
Ⅱ材料ならびに方法:使用データは当院にあるX線CT(シーメンス社製マルチスライス型16列)で撮像したもので、個人情報漏洩の観点から氏名,年齢,性別を消去したDICOMデータをソニー株式会社に郵送した.データ処理にはMimics (ver13)およびMagics (ver14)(Materialise Inc,Belgium )を使用し,ソニー株式会社が開発した造形モデル作製装置(研究開発フェーズ)でソニー社内において作製した.症例は39歳から64歳の3症例(平均49歳)の全例女性である.埋入位は下顎大臼歯部および上顎前歯及び小臼歯部であった.全症例とも術前のSimPlant®におけるシミュレーションにおいて穿孔の危険を認めた.
Ⅲ結果:シミュレーションは問題なく行われた.上顎に関してはドリリング中にモデルがわずかに部分破折をした.実際の手術は静脈内鎮静法併用局所麻酔下にて問題なく施行され,術中,術後の合併症は認めなかった.
Ⅳ考察ならびに結論:食塩造形モデルにおける埋入シミュレーションは,骨に類似した切削感覚であった.また両症例とも術中,術後の合併症も認めず実際に模型上で行う術前シミュレーションの確実な手術へのフィードバックが確認できた. しかし上顎の骨幅の狭い部位では造形モデルの破折などもあり,今後は強度や模型精度などについてもソニー株式会社および桐蔭横浜大学医用工学部(川島徳道教授)と連携の上,改善していく予定である.